
MULTI-JURISDICTION
富裕層はなぜ
「一つの国」に
すべてを置かないのか?
暮らす国。事業を行う国。子どもを教育する国。資産を管理する国。すべてを一つの国に置かず、目的ごとに拠点を分けるという考え方が広がっています。
INTRODUCTION
「どの国が一番良いか」ではなくなってきた
富裕層の海外移動は、以前のように「税率の低い国へ生活のすべてを移す」という単純な話ではなくなっています。
近年は、暮らす国、事業を行う国、子どもを教育する国、資産を管理する国を目的ごとに分け、複数の国や地域を組み合わせる考え方が注目されています。
重要なのは「どの国が一番良いか」ではなく、「何をするために、どこを使うか」です。
MIGRATION
富裕層の移動は、過去最大規模へ
Henley & Partners / New World Wealthの公開データでは、流動性のある投資可能資産100万米ドル以上を持つミリオネアの国際移動は、2025年の暫定値14.2万人から2026年には16.5万人へ増える予測が示されています。
この16.5万人は2026年の確定実績ではなく、あくまで予測値です。また、2025年の数値も暫定値として公表されているものです。
このデータが示しているのは「富裕層が一斉に一つの国へ移っている」ということではなく、国境を越えて生活・事業・資産の選択肢を増やす動きが大きくなっている、という点です。
2025 PROVISIONAL
14.2万人
142,000 people
暫定値(確定実績ではありません)
2026 FORECAST
16.5万人
165,000 people
予測値(実績ではありません)
Source: Henley & Partners / New World Wealth, Henley Private Wealth Migration Report 2025 / 2026(公式ページ)
FOUR BASES
「移住=一つの国に住む」ではない
複数拠点という考え方は、次の4つに整理すると理解しやすくなります。それぞれで重視する条件が違うため、同じ国が最適とは限りません。
LIVING
暮らす国
家族の日常、安全性、生活環境、医療、住みやすさ。
BUSINESS
事業を行う国
顧客、市場、契約、法人、銀行、ビジネスインフラ。
EDUCATION
子どもを教育する国
学校、大学、教育制度、将来の進路。
ASSETS
資産を管理する国
銀行、通貨、不動産、投資、相続・承継の設計。
WHY
なぜ複数拠点を持つのか
語られる理由を並べると、共通しているのは「一つに依存しない」という点です。
- 一つの制度変更にすべてを依存しない
- 一つの通貨に資産を集中させない
- 事業市場を一国だけに依存しない
- 家族の教育や将来の選択肢を増やす
- 地政学や制度変更への備えを持つ
ただし、複数拠点を持てば安全になる、有利になると言えるものではありません。拠点が増えれば、渡航や滞在の管理、各国での申告や届出、法人・口座の維持費用、専門家への相談コストなど、管理負担も増えます。税務上の取り扱いも複雑になるため、個別の確認が前提になります。
UAE
UAEが「複数拠点」の候補になる理由
Henley & Partnersの2026年レポートでは、UAEはWealth Mobility Competitiveness Scoreとして85.3が示されています。評価の対象は税制だけではなく、投資家アクセス、家族帯同、安全性、国際接続性、長期居住制度といった構造的な要素が含まれています。
これは「世界で一番良い国」という意味ではありません。同レポート独自の評価フレームワーク上のスコアであり、評価軸が変われば結果も変わります。
また、2025年のHenley公開データでは、UAEへの富裕層の純流入は+9,800人と示されています。これは2025年の予測/暫定データであり、確定実績ではありません。
Henley Wealth Mobility Competitiveness Score 2026(独自評価指標)。国の優劣を示すランキングではありません。
BUSINESS BASE
事業家なら「事業を行う国」を分けるという考え方
事業家の場合、複数拠点化の対象は資産だけではありません。日本の会社は日本市場を担当し、海外向けの事業は別の拠点で行う、という考え方があります。
海外法人は、契約、請求、決済、銀行口座、現地パートナーとの取引、国際取引の受け皿として使われる場合があります。
ただし、すべての事業者に海外法人が必要なわけではありません。国内市場で完結している事業であれば、日本法人のままのほうが管理面で現実的なこともあります。
EARNING
外貨を「持つ」から、外貨を「稼ぐ」へ
資産分散の文脈では、外貨を「持つ」ことが中心になります。一方で事業家には、海外顧客からUSDやAEDなどで売上を得るという別の選択肢があります。
円を外貨へ交換するだけでなく、事業そのものから外貨収入をつくるという考え方です。ただし、取引先の獲得、契約、決済手段、税務上の取り扱いなど、検討すべき点があります。
資産を「持つ」側の考え方は、シリーズ第1記事の「富裕層はなぜ『円だけ』で資産を持たないのか?」で整理しています。
OVERSEAS ENTITY
海外法人は「節税のため」だけではない
海外法人は税金の文脈で語られることがありますが、実務上は海外市場向けの事業基盤としての役割が大きく、次のような使われ方が検討されます。
- 海外市場向けの契約主体になる
- 海外向けの請求(インボイス)を発行する
- 外貨での決済を受ける手段を整える
- 事業用の銀行口座を検討する土台になる
- 国際取引の受け皿として使われる
- 現地での事業運営の前提になる
税務上の効果は、居住地、事業実態、取引構造、日本側の制度などによって異なり、一律に判断できるものではありません。詳細はUAE法人税・ドバイの税金で整理していますが、実際の判断にあたっては税理士等の専門家にご確認ください。設立費用や期間の目安は法人設立の費用と期間をご参照ください。
SUMMARY
一つの国を選ぶのではなく、選択肢を設計する
富裕層や国際的な事業家にとって重要なのは、「どの国が一番良いか」を決めることではなく、生活、教育、資産、事業という目的ごとに選択肢を設計していくことだと言われます。
UAEは、その中の一つの候補として検討できる地域です。適しているかどうかは、事業内容、家族の状況、居住形態、税務上の取り扱いによって変わります。
SERIES
シリーズ「富裕層と海外」
資産の持ち方と、拠点の持ち方。2つの視点を合わせて読むと、全体像が見えやすくなります。
FAQ
よくある質問
GET IN TOUCH
UAE・ドバイを「事業拠点」の
一つとして考えている方へ
「海外で売上をつくりたい」「日本法人とは別に海外事業の受け皿を考えたい」「UAE法人が必要なのか知りたい」「まだ具体的ではないが、複数拠点という考え方に興味がある」——このような段階でもご相談いただけます。
※本ページは一般的な情報および公開データを整理したものであり、特定の税務上の取り扱い、居住資格、ビザの取得、口座開設の可否を保証するものではありません。引用したデータには暫定値・予測値が含まれ、制度や実務は変更される場合があります。実際の判断にあたっては、税理士等の専門家にご確認ください。